研究概要 |
平成19年度の成果,1)渋滞生起確率の定義,2)希望走行速度の異なる車両が混在する場合に,時間経過とともに変化する車群形成・拡散モデル,3)観測された走行速度と車群台数分布から希望走行速度分布を推定するモデル,について,実データを用いた検証を行った.具体的には,実観測による交通流データから,各交通需要レートの時に渋滞が発生した割合を算出し,この2つの値の適合状況を調べ渋滞生起確率の現状再現性を検証した.また,現実のボトルネックを対象とした観測データを用い,希望走行速度分布を推定,推定された希望走行速度の確率分布に基づいて,需要発生レートと渋滞生起確率の関係を求めた.その結果,本研究が提案する渋滞生起確率が現実の交通現象を適切に表現していること,ならびに構築したモデルがいずれも十分な妥当性を持つことを示した. 本研究によって,車両挙動のバラツキを以て渋滞発生という確率現象の一部を説明することが出来たと考えられる.すなわち,1台1台のミクロな車両挙動に着目し,車両挙動の確率的なバラツキを以て交通容量(より正確には「渋滞発生時交通量」)の確率的変動を説明する新しい交通流理論を創設した. この成果により,これまでの流体力学理論が交通流とオキュパンシーという車両感知器から獲得される従前のデータとうまく調和し長く実務に利用されてきたのに対し,本研究による確率論的交通流理論では,個々の車両挙動のバラツキを取り扱うことから,AVIやプローブカーといった新しい観測・調査技術との調和が期待できる.すなわち,新しい理論に基づいた知見を活用することで,これらの観測・調査データを利用した全く新しい交通制御・運用・管理手法が生み出されることが期待される.
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