研究概要 |
本年度の研究成果は以下の通りである。 1. 遅延剤内包マイクロカプセルによる水和熱上昇速度の制御性能に関する実験的検討 直径200^<mm>, 高さ200^<mm>の円柱試験体の周囲を厚さ60^<mm>の断熱材で包み, 試験体中心部に熱電対を埋め込んで遂時温度を測定した。W/B=0.35のプレーンコンクリート(OPC), 遅延剤内包マイクロカプセル(セメント質量の0.2%添加)を混入したもの(MC)ならびにポリオール有機酸系の粉末遅延剤(遅延剤の量としてはマイクロカプセルに内包される量と同じ量)を混入したもの(RA)の合計3調合について比較検討した。その結果, OPCで57℃, MCで45℃, RAで51℃の最高温度を記録し, その上昇速度勾配の低下と合わせてマイクロカプセルの有効性を確認した。 2. 実機試験によるコンクリート温度応力制御へのマイクロカプセルの効果の検証 上述のOPC及びMCの調合とほぼ同一のコンクリートを用い, 実機試験を実施した。レディーミクストコンクリートプラントをアジテータ車で運搬し, 一辺が1^mの立方試験体に打設し, コンクリート温度およびひずみの変化を調査した。その結果, コンクリートの最高温度はOPCで80℃, MCで70℃を記録した。それに基づいて部材内部の温度分布, 更には温度応力を推定し, 引張強度の有効材齢依存性を考慮しながらひび割れ指数を求め, マイクロカプセルの温度ひび割れ抑制効果を確認した。 3. 収縮ひずみ抑制効果の検証 直径100^<mm>, 高さ200^<mm>のコンクリート円柱試験体を用いて簡易断熱試験を実施した。その結果, 遅延剤を直接混入したものは水和開始後1次的に膨張するものの間もなく収縮に転じ, 結局は, プレーンコンクリートの約1/4の自己収縮ひずみを示した。それに対してマイクロカプセルを混入した場合には, 80〜100μmの膨張ひずみを示し, その有効性が確認された。
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