研究概要 |
直接メタノール形燃料電池(DMFC)の電極触媒として、Ptが用いられるが、メタノールと酸素が共存すると、酸化反応と還元反応が同時に生じ、DMFCの起電力と出力の低下を引き起こす。本研究では反応選択性のある電極の作製を意図して、前年度のPt-C二元系電極に引き続き,Pt-Ru-C三元系スパッタ電極を作製し、酸素共存下のメタノール酸化活性について研究を展開した。 Au基板上に,三元同時スパッタ装置を用いてPt-Ru-C層を形成した。作製したPt-Ru-C電極の組成は、エネルギー分散X線分光法(SEM-EDS)で計測し、またX線光電子分光法(XPS)、X線回折(XRD)を用いたキャラクタリゼーションを行った。電気化学測定は,硫酸水溶液中,N2およびO2雰囲気下で電流-電位(i-E)曲線の測定を行った。 作製したPt-Ru-Cにおいて,PtとRuは固溶体化しているが,Cはいずれとも固溶していない。酸素雰囲気下でメタノール酸化を行うと,Pt-Ru-Cスパッタ電極の多くの組成において、Pt-Ruスパッタ電極では見られない酸化電流の増加が起こった。これは酸素添加によるメタノール酸化増感作用であると考えられる。Pt-Ru-Cスパッタ電極を前年度に研究したPt-Cスパッタ電極と比較すると、電流の立ち上がりが卑電位方向にシフトし,酸素添加によるメタノール酸化電流が増大して起こる。 このような特異な特性と,Pt-Ru-Cスパッタ電極の組成について詳細に調べた結果,C含有量が約5〜25 at.%である時、酸素添加による増感作用が起こり易く、特にPt56Ru38C6スパッタ電極は、酸素添加により最も高いメタノール酸化電流の増幅を示すことがわかった。 以上より,本研究で見出されたPt-Ru-C電極を燃料極に使用することで、高出力の直接メタノール形燃料電池を作製できると期待される。
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