研究概要 |
窒化物は様々な分野で用いられているが、イオン窒化法は負圧下のプロセスであり試料のサイズに制限があり、窒化力を持つ活性窒素種の発生量が少なく処理に時間を要するほか、試料そのものに放電を行うためスパッタによるダメージが発生する。本研究では放電部と反応部を分離し、活性窒素種の発生量を増大させ処理時間を減らすために大気圧下で無声放電を行いガス窒化を試みた。 円筒型放電管を用いて窒素ガスに無声放電を行い活性化窒素ガスを発生させた。円筒型放電管は電極が誘電体で覆われ誘電体バリア放電となる。試料は誘導加熱した。 放電を行わず単なる窒素ガスを吹き付けたFe試料は処理による着色も窒化相も検出されなかったが、無声放電を行った窒素ガスを吹き付けた試料は黒く着色し、細かなFe_4Nが生成していた。両試料から窒化物だけでなく酸化物であるFeOが検出されたのは窒素ガス中に存在する微量な酸素によるものである。また、放電部から試料までの距離を倍にして窒化処理を行ったところ、窒素活性種は寿命が短く短時間で急激な活性窒素種密度の減少が起こるため、窒化による試料への着色は見られなかった。 以上より無声放電を行うことで活性な窒素ガスが生じ、大気圧下であっても窒化できることが確認できた。同様にNb, Ta, Al, Cr, Znに活性化窒素ガスを吹き付けたが窒化物は生成せず、Ag, Cu等で窒化物と硝酸塩が生成した。これらは熱力学的に活性窒素の持つポテンシャルに制限があることもしくは活性窒素の生存時間に制限があることを示唆している。 他の放電管も試験したところ、放電電極間を短く設定することが技術的に困難であり、安定した無声放電は出来なかった。今後は発生装置にも工夫が必要である。
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