研究概要 |
圧電結晶である128YX-LiNbO3上に櫛形電極(IDT)を作成し霧化実験を行った.昨年度の研究で,表面を親水性にするため設けた金属膜(Au/Cr)が破壊される現象が生じた.そこで,長時間霧化により電極がどのようになるか検討を行った.導電性の低い水の場合,電極が破壊されることはない.しかし,導電性が含まれることにより電極破壊が生じた.生体分子を成膜する場合,水ではなくリン酸バッファ水溶液(PBS)を利用する.PBSは導電性をもつため,電極破壊の原因を知ることは重要である.そこで,詳細な観察を行った.その結果,(1)弾性表面波(SAW)伝搬面上の薄い液膜がIDTの方向に引っ張られること,(2)霧化した液滴がIDT上に付着することにより生じることが明らかになった.通常,SAW伝搬面に液体をのせるとSAW伝搬方向に液体が搬送されたり飛翔したりする.一方,粉などをのせるとIDTの方向(SAW伝搬方向と逆)に移動する.霧化現象で見られた液膜は非常に薄いため,液体中への縦波放射が起こらず固体をのせたときと同じ現象が生じているのではないかと考えている.膜材料を変更するたびにSAW素子も交換するのは効率的ではない.そこで,(1)と(2)の解決策として,電極用金属の変更とIDTへのカバーの装着が考えられる.前者は下地に用いているクロムをチタンに交換することである.ただし,研究室内の設備ではチタン膜を形成できないので,外部委託で素子を作成する必要がある.後者はIDT上に閉じた空間を設けることである.これにより,外部の影響を避けることができる.しかし,SAW伝搬面上にカバーを固定すると波が減衰し,霧化効率が低下する.これを解決しなければ薄膜塗布として利用できない.今後の課題である.
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