研究概要 |
本研究では, ZrO_2-FeO_x触媒を用い, 木質バイオマスの一種であるリグニンの分解と高付加価値樹脂原料芳香族への転換を目的としている. 多環芳香族を主成分とするリグニンから有用化学物質を合成する反応プロセス開発を実施した. 先ず, 先ず, 多環芳香族のモデル物質として, 石油生成プロセスで副製する常圧残油の軽質化を行った. ZrO_2, FeO_xの各触媒成分の機能を明確にするため, それぞれの担持量の異なる触媒を調製し, 反応実験を行った. その結果, FeO_xの格子酸素を酸素源として常圧残油を効果的に軽質化することに成功した. さらに, 反応系に共存する水分子がZrO_2上で分解し酸素活性種を生成することで, 消費された格子酸素が補われ, 反応サイクルが進むことを明らかにした. 続いて同触媒を用いて, リグニン構造のモデル物質であるアセトフェノンとグアヤコルの分解を実施したところ, アシル結合とアルキルアルコール結合の官能基を分解し, フェノールを生成することを明らかにした. 上記検討の結果を基に, パームシェルの熱分解タールの軽質化を実施した. 熱分解タールにはフェノール系の芳香環以外に多量の不明成分と水分が含まれる. 水蒸気雰囲気下、350℃〜450℃でZrO_2-FeO_x触媒を用い, 熱分解タールを反応させたところ, これら不明成分を選択的に分解することに成功したさらに, フェノール類とケトン類が新たに生成した. 熱分解タールに含まれる不明成分が分解し、フェノールとケトンが生成したと考えられる. しかし、450℃以上では生成した有用成分(フェノール, ケトン類など)の完全酸化分解とFeO_x触媒の劣化(ヘマタイト(α-Fe_2O_3)からマグネタイト(Fe_3O_4)への結晶性の変化)が進行した.
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