研究概要 |
岩手県・青森県の県境地帯に膨大な量の産業廃棄物が不法投棄され、現在、不法投棄廃棄物の撤去作業が実施されている。有機溶剤が不法投棄され、土壌、地下水が汚染されている区画があり、地下水の有機塩素化合物(VOC)のジクロロメタン(DCM)、トリクロロエチレン(TCE)の濃度は、約130ppm、約17ppmである。この地下水および土壌の高効率で低コストの処理法の開発が望まれている。地下水のpHは約6でFe(II)とMn(II)を含んでおり, 揚水直後に沈殿物の生成が観察された。昨年度は, 地下水に含まれるFe(II)とMn(II)が微生物的に酸化されることを明らかにし, Mn(II)の生物的酸化により生成する酸化マンガンによるVOCの分解実験を行ったが, VOCは分解されなかった。 本年度は, 酸化マンガンによるVOCの分解を検討するため, 試薬のMn(II)をもちいて化学的に酸化マンガンを作成してVOCの酸化分解について検討した。DCM水溶液, TCE水溶液に酸化マンガンを添加し分解実験を行ったが, VOCは分解されず, 酸化マンガンによるVOCの酸化分解反応は困難であった。 また, 生物的酸化により生成する酸化マンガンや水酸化鉄によるVOCの吸着除去について検討した。酸化マンガンや水酸化鉄の表面は親水性であり, 表面を疎水性にするため界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウムやドデシルアンモニウムアセテートを用いて, pHと界面活性剤添加量を変化させて吸着実験を実施したが, DCMとTCEは酸化マンガンや水酸化鉄の表面に吸着しなかった。地下水中に生息する微生物をもちいたVOCの分解・除去法を見出せなかった。
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