研究概要 |
本年度は, 昨年度に引き続き岩体の不均一性等が地表面傾斜量に及ぼす影響に関する有限要素解析を行なうとともに, 有限要素法に基づく地表面傾斜量の逆解析による地下水流動場の評価法を開発した. 1. 地表面傾斜量に及ぼす岩体の地表面形状や不均一性の影響については, 特に二層構造の岩体の場合と断層の影響について有限要素解析を行い, 以下の主たる知見が得られた. 1)上部に軟弱層, 下部に硬層がある場合にそれらの境界付近で地下水流動が生じると, 地下水流動場上部の地表面傾斜量は均一な場合に比較して大きくなる. これは, 硬層で体積変化が生じにくいことを補償するために軟弱層でより大きな鉛直方向の変形が生ずるためである. 2)断層の弾性定数が小さいほど, 岩体の変形が断層によってより吸収され, 地下水流動の影響は断層の向こう側には及ばなくなる. 3)不均一な岩体の場合, 岩体を均一と仮定して地表面傾斜量の逆解析により地下水流動場を評価すると大きな誤差を生ずる場合がある. 2. 二次要素を用いた有限要素コードを基に, 地表面傾斜量の逆解析により不均一岩体の地下水流動場を評価する方法を開発し, 岩体が均一半無限体の場合について理論解とほぼ一致することを確認した. ただし, 大きなモデルを現有のワークステーションで計算するためには, 分割計算を行なう必要があるために膨大な計算時間(約1週間)を要し, 改善の余地があることがわかった.
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