研究課題
萌芽研究
初年度に開発・実施したCT-MPSS法によって、シロイヌナズナの転写開始点タグ配列を38万ほど決定した。本年度は、それらの配列情報を用いて、植物の転写開始点に関する情報生物学的解析を進めたところ、以下のような研究成果が得られた。(1)高等植物のコアプロモーター領域では、ヒトやマウスのコアプロモーターにはみられない配列要素やコンテキストが使われている。(2)植物のプロモーターは、転写開始点がブロードに広がるタイプと、数塩基に集中するタイプに大きく分けられた。(3)このうち、TATAボックスを持つ遺伝子は、一般に、発現量が大きく、また、転写開始点の収斂度が高かった。(4)転写開始点は一般にプリンとピリミジンの境界に出現するが、発現量の多い遺伝子では、その周辺にさらに特徴があり、所謂イニシエーター(Inr)のコンセンサス配列により近づく傾向が見られた。(5)遺伝子の発現量と、TATAボックスの存在、Inr類縁配列のコンセンサス配列への収斂度、の3者には正の相関がみられた。(6)一方、ブロード型のプロモーターはTATAボックスやInrの代わりに、GA因子をもつ傾向があった。(7)植物のブロード型プロモーターには、動物のブロード型プロモーターにみられるようなCpGモチーフがみられなかった。従って、植物では、動物のCpGモチーフが果たしている役割を、GA因子が代わりに果たしているのかもしれない。(8)TATAボックス型プロモーターは、環境応答系の遺伝子に比較的多い傾向があった。
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