研究概要 |
蛋白質は,細胞内もしくは細胞外でプロテアーゼにより“代謝"され,ペプチドホルモンなどの機能ペプチドとしてある種の生命現象の制御に関与していることが知られている。最近では、ホルモン機能以外にも,転写因子に直接結合することにより転写制御を行うペプチドの発見など,従来では予想されていなかった蛋白質の“代謝"産物ペプチドが多種多様な機能を有する可能性が示唆されている。これを裏付けるかのように,高等動物や植物のゲノム上には,プロテアーゼは500種類以上からなる大きなファミリーを形成しており,この数はシグナル伝達の中心的な役割を示すプロテインカイネースや転写因子ファミリーに匹敵する。この事は,高等生物ゲノムがコードする数万種類の蛋白質は,多種のプロテアーゼが関与した機構により代謝され,その産物(ペプチド)が生命現象制御に広く関与した,“蛋白質代謝ネットワーク"を形成している可能性を示唆するものである。本申請はこのようなネットワークを網羅的に調べることができる技術や方法論の開発を目指すものである。この技術の利用は,“代謝"される蛋白質情報だけでなく,機能を有したペプチドの同定が可能となり,まだリガンドが未同定なオーファン受容体との相互作用や,代謝ペプチドラィブラリーの構築への利用などの応用研究,『蛋白質の分解とその運命』という古くて新しい領域の解明につながるものと期待される。しかし,これらの方法論の構築には,ハイスループットな基質蛋白質合成と切断活性の検出法の構築が必要である。本年度は、昨年度見出した新規カスパーゼ3切断プロテインカイネースの切断部位および、アポトーシス誘導時の細胞内での切断を確認した.
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