研究課題
萌芽研究
モデルケースとして、当研究部門で解析中の、温度により発現が転写後制御される、赤痢菌の病原性プラスミド上の制御因子invE遺伝子の5'-non coding regionにboxB配列を導入した。この1コピーのboxB配列がinvEの発現制御に影響しないことを確認した後、InvE蛋白が転写後調節で抑制される30℃で培養し培養液にフォルマリンを終濃度1%に加えることで、タグの付加されたinvE-mRNAとその結合蛋白Hfqならびに未知の調節RNA分子クロスリンクさせた。この細胞抽出液にタグ配列に特異的に結合するビオチン付加λNペプチドを作用させ、目的とするRNA複合体をストレプトアビジン磁気ビーズで精製した。得られた複合体は70℃の熱処理で、クロスリンクによる共有結合を可逆的に外し、プロテアーゼKで処理して得られたsRNAをポリA化し、オリゴdTプライマーを用いてcDNAを合成し、pGEM-Tベクターにクローニングし、シーケンスを行った。多数シーケンスした結果、残念ながら全て16S並びに23Sリボゾームの断片配列が得られ、その理由として、機能的にリボゾームが結合した時点で翻訳が中断しているか、λNペプチドの認識する配列が甘いため、細胞内に多量に存在するリボゾームを非特異的に結合してしまう可能性が示唆された。後者の可能性を否定するため、染色体上のRNA結合蛋白Hfqにヒスチジンタグを付加し、フォルマリン処理後、Ni-NTAビーズでRNA-Hfq複合体を精製した後、λNペプチドで再抽出する系を作製し、解析中である。副次的ながらこの系を用いて、Hfqがin vivoでinvE-mRNAに結合していることを証明することが出来た。当初計画された、大腸菌の既知のmRNA-sRNAペアである鉄結合蛋白のsodB-mRNAに関しては上記理由から、invEの系で良好な結果が得られた場合に追試することとした。
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Journal of Biological Chemistry 283
ページ: 5738-5747
Japanese Journal of Infectious Diseases 61
ページ: 58-64