研究概要 |
これまでに我々は、in vitroスプライシング反応系を用いたスプライシング後のラリアットイントロンRNA-タンパク質複合体の解析から、イントロンの代謝に関わる因子群の候補中にhPRP19やXab2といった、転写と共役したDNA修復(Transcription coupled DNA repair,TCR)機構に関わる因子群を同定した。また、これらの因子がイントロンの代謝因子hDBR1と会合していることも見いだした。このことは、真核生物の核内におけるスプライシング機構と、転写と共役したDNA修復機構との新たな連携を強く示唆している。しかし、in vitroにおける解析系がないため、TCRの機構についてはほとんど解析されていない。そこで本研究では、転写と共役したin vitroスプライシング反応系に損傷の入った鋳型DNAを用いることで、細胞内でのTCRを模擬したin vitro反応系を構築し、その系を用いたTCR機構の解明を目指した。 転写の鋳型として、効率よくスプライシングが起こることが知られているβ-globin,δ-crystallin,Adeno virus MLP各遺伝子の二つのエクソンとその間のイントロンを含む領域をCMV promoterの下流にクローニングした。そしてCMV promoterを付けた形で増幅した断片をin vitroでの共役系の鋳型として用いる際、psolarenを結合させたoligonucleOtideを鋳型に対合させることにより、その部分で転写が停止する系を構築した。これらの鋳型をHeLa細胞核抽出液と混合し、反応を行ったところ、目的の位置で転写を停止させることができた。また、鋳型をビーズ上に固定化して反応を行い、転写、スプライシングが起こることを確認することで、鋳型DNA上に形成された複合体を回収できる系を構築した。
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