研究概要 |
前年度に引き続きヒトの培養細胞に合成キメラオリゴヌクレオチドを導入することによって、核内RNAを特異的にノックダウンする実験系の条件至適化などを行った。ノックダウン用のアンチセンス・キメラオリゴヌクレオチドの標的特異性を実験的に証明するために、標的とのミスマッチを1塩基ずつ増やしたオリゴヌクレオチドを用いてノックダウン効率を測定したところ、非常に特異性が高く標的RNAを認識し分解できることが示された。ノックダウンを標的核内ノンコーディングRNAに対して引き続き試行し、新たに10種類以上の新しいncRNA種のノックダウンに成功した。一方で、マイナースプライセオソームを構成するU11,U12,U4atac,U6atacは、ノックダウンの効率が著しく低い事も同時に明らかになった。これらのsnRNPは非常にコンパクトなRNA-タンパク質複合体であるので、結合蛋白質によってアンチセンスオリゴヌクレオチドの結合が阻害された可能性が高い。この他にノックダウン効果による細胞表現型の変化をU7 snRNAと核内構造体に局在するMENαとMENε/βについて解析した。その結果U7 snRNAのノックダウンでは、昨年度報告した異常なヒストンmRNAの蓄積と細胞周期の遅延、さらに新たにS期外でのヒストンmRNAの異常な蓄積が観察された。MENαのA549細胞でのノックダウンでは、近傍のMENε/βncRNAの蓄積量が減少することが示された。MENε/βのノックダウンでは、このRNAの局在場部位である構造体が消失することが明らかになった。こうして2年間に渡る解析によって、アンチセンスキメラオリゴヌクレオチドによる核内ノックダウンの実験系は、その効率、特異性、更に引き起こされる効果の確実性などにおいて解析系として有用である事が示された(論文をminor revision中)。
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