研究概要 |
本研究は,特殊に分化した果皮の(1)CO_2固定能力,および,(2)色素合成能力,を明らかにすることを目的に行ったものであり,得られた結果は以下のように要約される.なお,成果の一部は,平成21年9月に開催された園芸学会秋季大会で公表した. (1)ウンシュウミカン果皮のCO_2固定能力は,明期・暗期ともに満開後100日前後が最も高く,この時期の果実遮光は成熟時の糖・酸含量を明らかに低下させることが明らかとなった.前年度に引続き行った本年度の研究成果は,以下のように要約される. 1)ラジオアイソトープを用いた実験により,9月上旬の果皮で固定された^<14>CO_2の約1/3が果汁に蓄積され,その^<14>Cはそれぞれ果汁内の糖・酸・アミノ酸分画に取り込まれることが証明できた.なお,暗黒下でのPEPCによる^<14>CO_2固定は光合成の40%弱であったが,PEPCによって固定された^<14>Cも糖分画に検出されたことから,ウンシュウミカン果皮にはC_4光合成的機構が備わっている可能性が示された. 2)果実のPEPC活性はクロロフィルを含む組織で高く,内部の組織では低かったことより,ここでもカルビン回路とPEPCが相互作用するC_4光合成的機構の存在が示唆された. 3)結果枝に環状剥皮を施して枝内への光合成産物流入を阻害すると,果皮の光合成速度は約2倍高まったことから,果皮の光合成は葉の働きを補完する作用をもつものと考えられる. (2)スモモ果肉のアントシアニン生成は,その前駆体のカフェ酸やフラボノールを作り出す機構が備わっているためであり,これらがアントシアニンに代謝される過程では光が不要であることを明らかにした. さらに本年度は,以下のことを明らかにした. 1)光照射は,むしろ果肉のアントシアニン生成を抑制する可能性がある. 2)果肉では,果皮でアントシアニン生成を促進するABAや抑制する2,4-Dなどの植物ホルモンでは制御されない.
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