研究概要 |
1. 「ひも上置肥」手法の開発 「防根給水ひも」栽培において土壌を繰り返し利用することを容易にするため、栽培後に残存肥料が取り除ける「ひも上置き肥(以下, 置肥とする)」手法について検討した.置肥とは肥効調節型肥料を透水性の袋に詰め,栽培容器内の「ひも」上に置く手法である(第2図).本試験では,この方法(置肥区)と土壌混和(混肥区)を中玉トマトの第7段摘心栽培において比較した.生育・収量ともに置肥区は混肥区より若干劣った.これは置肥区の養分溶出が混肥区より遅く,養分吸収量が減少したことによると考えられた.定植約2か月後に行った摘心部の生育量は、すでに置肥区で劣っており,摘心時以前に養分溶出に差が生じていたものと考えられた.置肥区における袋中の養分収支から,T-N,P205,K2O,CaO,MgOはそれぞれ6,4,5,5,3割が溶出した.混肥区に比べて置肥区の土中の残存養分量はT-N,P205,K20とも2-3g少なかった.また、栽培後の土壌中養分量を栽培前と比較すると,T-Nは置肥区では同量となったが,混肥区では栽培後の方が3g多くなった.P205,K20は,置肥区では栽培後の方が2g少なくなったが混肥区では差がなかった.CaOは両区とも2.5g,MgOは両区とも1g栽培後の方が少なくなった.肥料養分が過剰に残存すると、次作に同じ肥料設計を適用することが困難となる。また残存した肥料の溶出速度も考慮しなければならず,次作での肥料設計はより複雑となる.本試験の結果より、置肥ではもう少し溶出速度の早いタイプをシグモイド型で設計するのがよいと推察された。 2. 高K/Ca培養液によるトマト葉縁の黄変抑制と果実収量の確保 大玉トマトの促成栽培では培地量30、大塚A処方1/2濃度培養液管理で安定生産が可能となるが、第5段花房以降に葉の縁に激しい黄変症状が現れる。培養液を2/3濃度に高めると黄変症状は抑制されるが収量が半減する。そこで、K濃度を硝酸カリで高め、高まった窒素を硝酸カルシウムで落とすことで窒素を1/2濃度標準とし16段摘心栽培を行ったところ、株当たりの収量が7.3Kgとなり標準区に比べて約1Kg低くはなったが、葉の黄変は強く抑制された.一方、果実糖度と酸度は、いずれも0.3程度上昇した.なお、砂培地でも土培地と同様に生育し、果実収量の確保できることが明らかとなった。培地の再利用を考えると、土よりも砂の方が簡便で、今後は砂を培地とした生産技術の構築が必要とした。
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