研究課題
萌芽研究
植物の遺伝子操作は、食糧、機能性食品、薬効成分、エネルギー等の効率的生産への可能性を秘めているにも係わらず、遺伝子組換え農作物は社会的に容認されているとは言い難い。その要因として、花粉の飛散による組換え遺伝子の他植物への転移の可能性、圃場における除草剤耐性遺伝子を用いた場合の除草剤耐雑草の出現の可能性などが挙げられる。これらの問題を解決するために、葉緑体に局在し分岐鎖アミノ酸の生合成に介在するアセト乳酸合成酵素[acetolactate synthase(ALS);別称acetoh ydroxyacid synthase(AHAS)】を用いて、植物由来新規葉緑体形質転換維持マーカーを開発した。ALSはアミノ酸配列の変異の違いにより、異なる阻害剤に耐性となる特徴を持つ。本実験ではシロイヌナズナALS触媒サブユニット(以下ALSと呼ぶ)のコード領域に複数の変異を導入し、3種類のALS阻害剤に対してそれぞれ耐性の異なる二重変異を含む5種類の変異型ALSを作製した。これらをそれぞれスペクチノマイシン耐性遺伝子aadAに隣接して導入したニンストラクトを作製し、タバコ葉緑体ゲノムにパーティクルガン法により導入後、スペクチノマイシン耐性で選抜を行った。得られた耐性系統は、葉緑体ゲノム中に変異ALS遺伝子を保持しており、正常に生育することを観察した。本形質転換系統の葉をALS阻害剤を含む再分化培地で培養した。その結果、阻害剤を含む培地で、再分化個体が得られ、ALS阻害剤に耐性を示すことを証明した。この技術により、組換え遺伝子の他植物への転移を防ぐことが可能となる。さらに、圃場において異なる阻害剤のローテーション使用が可能になり、除草剤耐性雑草の出現の回避にも繋がる。また、除草剤の淘汰圧をかけ続けることで、形質転換葉緑体の脱落を防ぎ、形質転換形質の維持が容易になる。選抜条件を検討することにより、aadAを介さず、変異型ALSを選択マーカーとして葉緑体形質転換が可能なるものと考える。
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J. Pestic. Sci. 33
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J. Pestic. Sci. 33(印刷中)
10021002139
http://sfns.u-shizuoka-ken.ac.jp/pctech/