研究概要 |
前年度の研究で,transposase認識配列を付加した発現ベクターをマダイ受精卵に導入することで,transposaseのmRNAの共インジェクションの有無にかかわらず12.4~14.7%の個体の鰭からGFP遺伝子が検出され,共インジェクションした場合には斃死個体から高率でGFP遺伝子が検出された。このようにメダカのtransposase認識配列をマダイが認識して転移する能力が示唆されたが,マダイ由来の転移があることからtransposaseシステムは安定的なトランスジェニック系統作出の技術として問題があることが考えられた。そこで本年度は18塩基の配列を認識可能なmeganucreaseの利用について検討した。 骨格筋で強く発現するα-アクチンプロモーターに緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を連結したDNA断片の両端にmeganucrease I-SceIの認識配列を付加したプラスミドベクターを作成した。2009年12月に秋季から冬季にかけて産卵する香港系統のマダイから採卵し,上記発現ベクターおよびI-SceIの共インジェクションを試みたが,卵質が悪く発生しなかった。そこで,急遽マダイ4歳魚を陸上水槽に収容して蛍光灯による長日処理および加温によって成熟を誘導したところ,1月中旬から産卵を開始した。産卵が安定するのを待って,2月11日にマダイ受精卵へのマイクロインジェクションを再度行った。上記の発現ベクター100ng/μlとI-SceIを3U/μlおよび1U/μlの濃度で共インジェクションする試験区と,発現ベクターのみをインジェクションする対照区を設定し,各試験区とも1,000粒以上の卵にマイクロインジェクションした。 その結果,3U区で230尾,1U区で315尾,対照区で309尾の孵化仔魚が得られ,3U区のみに骨格筋にGFPを発現する個体が認められた。GFP発現観察後はそれらの仔魚を飼育した。
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