研究課題
萌芽研究
これまで元素による産地判別は主にICPを用いた実験が行われてきた。しかし、測定元素のスペクトルを広げることができればより正確に産地が特定できることになる。そこで、本研究では平成20年度、実験精度を高めるため産地が明確なタマネギを使用して再度、測定条件を検討し、中性子放射化分析(NAA)ならびに即発γ線分析(PGA)を用いて多種類の元素の定量を行った。カリウムを基準として塩素とホウ素の量を比較したところ、佐賀産の方が対カリウム比で北海道産よりも塩素量が高くなることが判明した。通常行なわれる分析法では塩素のようなハロゲン元素は分析の際に量が減少するため定量が困難であるが、非破壊分析法である放射化分析により正確な結果が得られることが示された。次に、牛肉の産地判別を行なった。試料には、オーストラリア産のホルスタイン、アメリカ産牛肉、国産ホルスタイン、黒毛和牛を用いた。まず、試料の調製法を検討した。その結果、フリーズドライ法を採用して試料を調製することとした。 NAA分析では、Na、Mg、Cl、K、Br、Sm等が定量できた。また、PGA解析では、H、C、N、S等が測定できたのでko法を用いてこれらの元素の定量を行なった。両分析結果から統計処理により、各試料の元素含有量の特徴について解析を行なったところ、アメリカ産牛肉と黒毛牛は元素分析結果から分別することが可能なことが示されたものの、国内産ホルスタインやオーストラリア産ホルスタインは区別することはできなかった。また、牛肉の採取部位によるデータの違いについて検討したところ、ヒレ、サーロインなど、採取する部位が一定でなくとも、黒毛和牛とアメリカ産牛肉については、元素分布から産地判別が可能であることが示された。本研究により元素による農産物の産地判別の可能性が得られたため、今後、サトイモなど他の農産物についても同様な実験を行う予定である。
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Journal of Radioanalytical & Nuclear Chemistry (掲載決定)