我々は脂肪組織で発現する新規アデイポカイン(Adipokine)としてマウスケメリン(Chemerin)とその受容体を報告している。平成20年度は、ウシケメリンとその受容体の遺伝子をクローニングし、塩基配列の解析を行った。GenomeNetを用いたBlastan解析を行ったところ、ウシケメリンとケメリン受容体と思われる遺伝子配列が得られた。これらの配列を基に、特異的プライマーを作成し、ウシケメリンとケメリン受容体全長を決定した。黒毛和種牛の組織からtotal RNAを抽出し、ウシケメリン遺伝子分離と遺伝子発現に供した。ウシケメリンcDNAは3個のExonからなり、ORFは489bpであった。得られた配列はヒトとマウスの塩基配列との相同性は、各々79%と69%であり、アミノ酸配列の相同性は、各々74%と60%であった。ケメリン受容体のORFは1089bpであり、ヒトとマウスの塩基配列と84%と79%の相同性を示した。各組織ごとにおけるケメリンの遺伝子発現量については、肝臓と脂肪組織で高い発現が見られたが、ケメリン受容体は脂肪組織で高い発現量を示したものの、各組織において差は見られなかった。ウシ分化脂肪細胞において、ケメリンとケメリン受容体の遺伝子発現量は脂肪細胞分化に伴い発現量は上昇した。また、分化脂肪細胞でのTNF-αの処理はケメリンとケメリン受容体の遺伝子発現量を増大させた。以上のことから、ウシ脂肪組織でも同様に脂肪細胞由来のアデイポカインが存在し、脂質代謝系に影響を与える可能性が示唆された。
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