研究課題
萌芽研究
「研究の目的」本研究の目的は、マウスの行動実験によって、抗うつ作用を有する匂い物質をスクリーニングし、その抗うつ作用に脳内のニューロン新生促進が関与しているかどうかを検証するとともに、匂い物質によるニューロン新生促進の作用機構を解明するところにある。平成19年度の研究により、レモンの香成分であるシトラールは強力な抗うつ作用を有すること、また、新生期の側脳室下帯における神経幹細胞の増殖能を高め、嗅球でのニューロン新生を促進することを明らかにした。平成20年度の研究では、シトラールに加え、情動行動に影響を与えることが報告されているα-pinenの抗うつ効果を検証するとともに、成体マウスの海馬歯状回および側脳室下帯に存在する神経幹細胞の増殖能に対するシトラールおよびα-pinenの効果をBrdU免疫染色法によって検討した。「研究実施計画」(1) 抗うつ作用 : マウス強制水泳テストによって、α-pinenの抗うつ効果を調べたところ、α-pinenの急性曝露は、うつ状態の指標となる無動時間を短縮させる傾向を示すことが観察された。(2) 成体マウスの神経幹細胞の増殖能に対する効果 : 雄性ICRマウス(8週令)にシトラール、α-pinenまたは溶媒を慢性的(7日間)に曝露させ、BrdU(50mg/kg)を腹腔内投与し、その2時間後に脳をサンプリングし、海馬歯状回および側脳室下帯における陽性細胞を定量したところ、シトラールおよびα-pinenは側脳室下帯における増殖能には影響を与えず、海馬歯状回の増殖能を抑制した。匂い物質は脳部位特異的に神経幹細胞の活性を調節することが明らかとなった。
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