研究課題
萌芽研究
メタボリック症候群の病態形成時には非常に多くの遺伝子産物が複雑に絡み合い相互作用している。よって本研究は、そのキー分子であるAktに着目し、メタボリック症候群の病態形成をAkt会合分子の変化という観点からプロテオミクスにて明らかにすることを目的とした。平成20年度はAkt-TAPおよびAkt-strep組換えアデノウイルスをラット血管内皮細胞に発現させ、高グルコース濃度、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、長時間作用型Ca拮抗薬存在下で培養することで刺激に応じたAkt会合タンパクの変化を解析した。Akt-TAPについてはカルモジュリンビーズ、IgGビーズの二段階精製、Akt-strepについてはstrep-TactinにてAkt会合タンパク質をアフィニティー精製した。精製後に、SDS-PAG/銀染色を行い、会合分子のパターンの違いを比較した。さらに、バンドをゲル内トリプシン消化し、MALDI-TOF型質量分析計にて順次、同定した。複数の会合分子の変化を認めたが、変化するバンドほど量が少なく、同定に至らなかった。年度途中より安定同位体による標識とnanoLC/MS/MSを使用した同定を新たに始めたが、現段階では有効な結果は得られていない。以上、刺激に依存したAkt複合体の変化を分子レベルで同定することについては十分な結果を得ることができなかった。この理由としてAktの基質に対する結合が一過性であり、Akt複合体の維持が十分でなかった可能性が示唆される。それに対して、Aktキナーゼ活性欠失型変異体の作製や架橋剤の使用を検討したが解決には至らなかった。一方で、恒常的に結合している分子の同定には成功し、タンパク質相互作用から生理現象を説明するという本法はbait分子の選択によっては十分機能すると考察した。今後、baitを変更して本法によるネットワーク解析を継続する。
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