研究概要 |
細胞は試験管とは異なり、化学反応が局所的におこる。自由拡散している酵素と基質が確率的に出会うのではなく、数十nm四方の「ミクロドメイン」に濃縮された関連分子の間で効率よくシグナルが共役・伝達されている。然るに、この「マイクロドメイン」内における代謝反応論・酵素学はこれまでほとんど明らかにされていない。 本研究では、神経可塑性発現や神経回路形成に際し、膜ミクロドメインや微小突起レベルで制御される蛋白リン酸化反応が必須であることを手がかりに、単一シナプスおよびその近傍において生じるリン酸化反応を定量し、また突起制御に貢献する蛋白蛋白相互作用を可視化し、さらにウィルスベクター等を応用し、多数の酵素反応を同時定量したり、細胞種特異的定量を可能にする基盤技術の創成を試みる。このような計画に基づき、以下のような基盤技術を確立した。 1.CaMKIgamma/CLICK-IIIの膜状自己凝集化をFRETによって有意に検出することに成功した。本成果は、Takemoto-Kimura, et. al.としてNeuron誌に発表した。 2.単一シナプスを刺激して、その近傍でCa2+上昇やキナーゼ活性上昇などをリアルタイムで可視化するUV uncaging FRETシステムを完成させた(Fujii, et. al.投稿準備中)。 3.京都大学工学部森研究室との共同研究で、アクティブゾーン蛋白RIMlaと電位依存性カルシウムチャンネルのシナプス終末における共局在を定量することに成功した(Kiyonaka, et. al.Nature Neurosci. 2007)。
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