フェリナンの翻訳調節機構を応用した調節発現ベクターを構築するため、アコニターゼ結合部位を翻訳開始コドン上流にそれぞれ1個、3個または5個直列に持う発現ベクターを、CMVプロモーターとネオマイシン耐性遺伝子を持つ哺乳動物用発現ベクターを用いて構築した。との汎用ベクターに発現蛋白質の定量を行うため、ルシフェラーゼ遺伝子を挿入したレポーターベクターを構築した。このレポーター発現ベクターをCHO細胞、COS細胞に導入し、培養液に加える鉄イオン濃度をHemeまたは鉄イオンキレーターであるdesferrioxamineを用いて各々濃度を0〜100μMに変化させた上で、ルシフェラーゼ活性を用いて発現制御の定量評価を行った。その結果、アコニターゼ結合部位を3個または5個持つ発現ベクターを一過性に導入した場合、CHO細胞、COS細胞ともにdesferrioxamineを用いて鉄イオンをキレートした条件に対して、Hemeを100μM添加した条件で2.2倍の活性上昇がみられた。予想より低い活性制御がルシフェラーゼ遺伝子の安定性に起因する可能性を検討するため、ルシフェラーゼレポーター遺伝子がより短時間で代謝されるタイプに変更して検討した結果、鉄イオンをキレートした条件に対して、Hemeを100μM 添加した条件で2.8倍の活性上昇がみられ、わずかながら活性制御が上昇した。汎用調節発現ベクターとして広く用いられるためには、発現制御が少なくとも、10倍以上必要と考えられる。以上の結果により、フェリチンの翻訳調節機構を応用した調節発現ベクターを広く用いられるようにするためには、さらに工夫が必要であることがわかった。
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