研究概要 |
miRNAの面から食道扁平上皮癌、胃癌の発生・進展機構を明らかにした上で、これらの癌に対する新しい個性診断系を確立することを目的として、最終年度となる本年度は以下のとおり実施した。 1)胃癌および正常胃粘膜における網羅的miRNA発現解析と機能解析 約250miRNAのプローブを搭載したマイクロアレイおよび188mRNAを解析できる繊維型マイクロアレイ(三菱レイヨンMICH07)を用い、胃癌および正常胃粘膜の新鮮凍結組織を材料としてmiRNAの発現を解析した。胃癌と正常とで有意に発現レベルが異なっていたmiR-21等について、定量的RT-PCRにより発現の検証を行なった。さらに、組織型との関連ではmiR-100,miR-105等が、進行度との関連ではmiR-100,miR-125b等が発現が異なっていた 。 2)胃癌におけるmiRNAの標的遺伝子の解析 miRanda、 TargetScan、 PicTarを用いてその標的遺伝子の候補を検索し、miR-21ではBCL2,CDC25A,E2F3,MADH7,PTEN等を、miR-125bではE2F3,MKNK2,SP1,STAT3等を抽出した。これらについて、miRNAの発現抑制による発現変化の確認を行なっている。 3)胃癌特異的miRNAのエピジェネティック発現制御の解析 胃癌細胞株をヒストン脱アセチル化酵素阻害剤TSAで処理することにより、増殖・浸潤の抑制、p21等の発現の誘導がみられた。この細胞について、上記のマイクロアレイで発現が変化するmiRNAを解析し、1)で捉えた組織型や進行度、予後に相関するmiRNAリストと比較した。 ここに得られたデータは、癌の個性診断、治療に直結した診断に有用な分子マーカーと考えられる。今後、これらを搭載した診断用miRNAミニアレイを作成し、診断の場に還元したい。
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