研究概要 |
本研究では、日本の社会において,特に医療をめぐる熟考討議的政策分析(deliberative policy analysis)のモデルを構築することを目指すものである。最終年度である本年度も、これまでの課題を継続し、(1)熟考討議的政策分析の概念と可能性をこれまでの政策分析のあり方と対比を含めて精査し,これまでの応用事例をふまえて,医療資源配分に関する政策領域における応用の可能性を検討した。(2)医療政策の分析を実施している欧米の民間シンクタンクにおける熟考討議的政策分析の応用と展開を検討し,日本においてその政策分析を実行する制度的・組織的基盤について検討した。(3)特定の医療資源配分に関わる政策分析を実際に行うべく,日本における熟考討議的政策分析の意義と課題について検討した。 具体的には,昨年度に引き続き、内外の文献を検討することを中心にして、熟考討議的政策分析の概念と議論を国際的研究センターのワーキング・ペーパー等も含めて検討した。北米,欧州等における医療資源配分問題についての政策分析の実施・普及に関与している諸機関の動向の分析を引き続き検討した。 以上のような作業において、特に日本における具体的な政策課題として「健康格差」の問題を分析する準備をすすめたが、本研究の趣旨である理論的に構築された手順を具体的に確定するまでにいたらなかった。この中で、分析課題の設定、分析手順の明確化、市民参加の手法の適切な選択、などさまざまな点で、モデル構築に向けてなお検討すべき課題があることが示された。これらの結果については、近日中に公表予定である。
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