研究概要 |
ヒト胆嚢癌における癌関運粘液形質MUC4の解析 ヒト胆嚢癌51例における手術標本についてMUC4の発現頻度および病理学的悪性度との関連性について検討した.その結果.MUC4は51例中34例(67%)に発現していた.特に,高分化あるいは中分化腺癌における発現頻度が高率であった.正常胆嚢上皮にはMUC4の発現は認められなかった.凍結組織標本が得られた症例については,分子生物学的検討を加えた.免疫沈降と蛍光免疫染色の結果,MUC4ほ癌潰伝子産物であるerbB2と会合していた.さらにMUC4とerbB2の会合はerbB2の顕著なリシ酸化と関連していた.その下流では,MAPK,Aktのシグナル分子のリン酸化が生じており,またアラギドン酸代謝の活性化因子であるCOX-2の強い誘導が観察された.細胞実験において,heregulinの存在下では.MUC4の過剰発現は細胞増殖能を充進させた.これらの解析結果より,MUC4は,胆嚢癌部位のみに過剰発現が認められたこと,erbB2と複合体を形成することより考えて,胆嚢発癌またその進展にかかわるerbB2シグナル伝達機構の活性化に重要な役割を演じていることが推測された. 胆嚢・胆管癌における糖鎖プロフイリング 胆道癌細胞株(いずれもヒト胆道癌の手術標本より樹立)の8種類(各1×106個)について,膜フラクションに存在する糖タンパク質(約40〜80ug)の比較糖鎖プロファイリングを試みた(アブライ濃度はそれぞれ1ug/ml).その結果,各細胞株について固有のシグナルパターンが得られ,17種のレクチンのシグナル強度比を用いグラフ化することでそれぞれを容易に識別することが可能であった.特にシアル酸を特異的に認識するレクチン群のシグナルパターンに相違が見られた.そこで,肝内胆管癌の診断マーカーの有力候補になると考えるレクチンAについて,正常肝(転移性肝癌),肝内胆管癌,混合型肝癌,肝細胞癌め標本における発現を組織化学にて検討した.レクチンAの発現率は,正常肝(32%),肝内胆管癌(88%),混合型肝癌(80%),肝細胞癌(0%)であり.肝内胆管癌においては高い発現率であった.このことまりレクチソAは,肝内胆管癌および混合型肝癌の診断マーカーとして有用である可能性が示唆された.今後においては,レクチンAのキャリアー分子の絞り込みを行っていく予定でいる.
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