研究概要 |
1.原爆被爆者からなる成人健康調査対象者2,606名の顆粒球、単球、およびリンパ球中のナイーブとメモリーCD4,CD8 T細胞の細胞内活性酸素種(ROS)を測定した。その結果、単球、顆粒球、ナイーブCD8 T細胞の細胞内H_2O_2は年齢とともに上昇する傾向が認められた。一方、リンパ球、単球、顆粒球、ナイーブCD8 T細胞で細胞内O_2レベルの年齢に伴う上昇の傾向が認められた。 2.マウス(BALB/c,C57BL/6,C3H)での細胞内ROSレベルを測定した結果、ヒトでの結果(単球>顆粒球>リンパ球)と比べると、リンパ球が最も低い細胞内活性酸素レベルを示すことは共通する一方で、マウスでは顆粒球の活性酸素レベルが単球よりも高値であることを示す知見が得られた。さらに、動物モデルによる検証を進め、2Gy放射線被曝6ヶ月後の影響を検討した結果、C3Hマウスでは照射群のTリンパ球ナイーブ、メモリーCD4とCD8サブセットのH_2O_2レベルは非照射群より高値であったが、BALB/cマウスとC57BL/6マウスの放射線照射に伴うH_2O_2とO_2レベルの増加は認められなかった。 3.2つの系統のマウス(BALB/c,C3H)での2Gy照射後の血漿中サイトカインを測定した結果、非照射群ではBALB/cマウスでは、IL-2,IL4,IL-10,IL-12,IFN-gammaが、C3HマウスではIL-4,IL-10,IL-17が加齢に伴って増加した。また、BALB/cマウスでは照射後、IL-2,IL-4,IL-12,IFN-gammaレベルの増加が認められが、1年以降では照射群と非照射群との有意な差は認められなかった。C3Hマウスでは、IL-4レベルの増加が認められ、1年以降では、IFN-gammaとIL-12レベルに増加が見られた。これらの結果から、マウスを用いた動物モデルにおいては、血漿中サイトカインの増加に加齢が強く影響していることが示唆された。
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