糖尿病性腎症の増加に伴い新規透析導入患者数は年々増加しており、治療薬の開発は急務であるが、現時点では腎不全に陥った腎臓を元に戻す方法はない。しかし一方で急性腎不全からの回復は臨床的にしばしば目にすることであり、その際には著しく障害された尿細管が元通りに再生する。つまり私たちの体には腎不全から回復するメカニズムが備わっていると考えられる。 本申請課題ではGenetic lineage tracing法を用いて私たちの体に内在する腎再生メカニズムを明らかにすることを目的とする。Genetic lineage tracingとは、ある細胞に形質転換しても消えない遺伝的なマーカーを与えることで、その細胞由来の組織を追跡する手法である。我々はCreリコンビナーゼの活性がある場所でのみLacZを発現するIndicatorマウスと、タモキシフェンを投与した時のみCreリコンビナーゼを活性化するInducible Creマウス(CreERT2;変異エストロゲン受容体とCreリコンビナーゼの融合蛋白であり、タモキシフェンが結合すると核移行する)を交配することによって、任意の時点で近位尿細管や遠位尿細管であった細胞を標識することを可能にした。
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