研究概要 |
先進国ではアレルギー疾患が国民病として位置づけられ、その対策に大きな社会的な関心が集まっているが、その原因物質(アレルゲン)の診断方法は遅れている。本研究では、2.5Aのダイヤモンドの結晶格子にカルボキシル基を導入した蛋白チップを用いる事で、これまでにない高密度集積した抗原のハイスループットを実現し、抗原に特異的な血液中のIgE, IgG4, IgG2a, IgA、と唾液のsIgA, IgG4を測定して、多次元的評価を乳幼児と新生児で実施した。 僅か1-2マイクロリッターの血清、唾液、涙液、鼻汁で一度に約60抗原に対するlgE抗体、IgA抗体、IgG(G4,G2)抗体を定量可能な蛋白チップを確立した。これを用いた新生児、及び乳幼児の食物アレルギー検査では、血清中の抗原特異的IgEタイター値とアレルギー症状は必ずしも相関しない事、抗原特異的IgAタイター値の高い患者ではIgE値が高くても症状が出ない事、同様な傾向がIgG値においても認められる事が明らかとなった。さらに新生児のアレルギーは、臍帯血の抗原特異的IgEから診断が可能であり、胎内感作が原因と推定された。出生時に抗原特異的IgEが高くても同時に抗原特異的IgAの高い乳児はアレルギーを発症しにくい事、臍帯血中のIgGは母子移行抗体の影響を反映している事が明らかとなつた。さらに食物負荷試験では、唾液中の抗原特異的IgA抗体が見られる場合は、血液中の抗原特異的IgE値が高くても症状が見られなくなる事が判明した。このように、高密度集積ハイスループットアレルゲン診断チップを用いることで、精度の高いアレルギーの診断が実現される事が示された。
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