研究概要 |
何らかの原因で免疫寛容が破壊されると自己抗原を提示する活性化樹状細胞(DC)が自己免疫性疾患の発症に関与する。自己免疫性水疱症,膠原病,苔癬様反応,尋常性乾癬,尋常性白班,円形脱毛症などの皮膚科領域の疾患において,それらの疾患を誘導する自己抗原を提示するDCは同定されていない。本萌芽研究では,実験動物に皮膚で自己免疫応答を起こさせる新い方法の確立を目指す。そのためには,1)DCに適切な皮膚由来の自己抗原を負荷し,2)その自己抗原に対する免疫寛容を破壊しなければならない。最初のハードルを克服するために,われわれは細胞工学的手法を用いて,DCとケラチノサイト(KC),線維芽細胞(FB)またはメラノサイト(MC)とのDCハイブリッド細胞(DC Hybrids)を樹立する。2番目のハードルを克服するために,種々の実験系で免疫寛容を破壊することが知られているTh1サイトカインIL-12をDC Hybridsが過剰に分泌するように遺伝子工学的に改変する。本研究によって自己免疫性皮膚疾患類似のモデルマウスが確立できれば,その疾患の発症のメカニズムに重要な知見が得られるだけでなく,そのモデルを用いて現在未知である病因性自己抗原の同定に利用できることが期待される。IL-12高発現DCは作成できたが,そのDCとKC,FBのHybridは,樹立できなかった。DCとKC,FBの細胞の大きさの違い,細胞膜組成の違いが影響している可能性があるが,今後,細胞融合ウイルスなどを用いて融合条件を検討して行く予定である。
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