研究概要 |
『目的』ESR法を用いた酸素濃度測定は、ESRスペクトルの線形が酸素濃度に依存して変化するという原理に基づいた方法である。これを臨床応用するための予備実験として、マウスの腫瘍を用いて、放射線治療後の腫瘍内の酸素濃度変化をESR法により、測定する。 『方法』SCC VII腫瘍をマウスに作成し、直径が約7mmになった時点で、それぞれ、0,5,10,15,20Gyを照射し、その後、経時的に腫瘍内酸素濃度の変化をESR法を用いて、測定した。SCC VII腫瘍腫瘍内に酸素濃度測定プローベ(LiNc-BuO結晶)を注入し、プローベのESRスペクトルの測定から、腫瘍内酸素濃度を測定した。プローベのESRスペクトルの測定は、サーフェスコイルを利用したin vivo ESRシステムを使用した。 『結果』照射後の酸素濃度は、5Gy照射直後に増加し、その後、照射後12時間までに照射前のレベルに戻った。10,15,20Gyの照射では、照射後6時間で急速に増加し、24時間まで増加し、その後、徐々に低下した。腫瘍の大きさは、5Gyでは縮小しなかったが、10,15,20Gyでは縮小した。 『考察』SCC VII腫瘍の照射後の再酸素化のパターンは、照射線量によって異なった。ESR装置を用いた腫瘍内酸素濃度測定は、照射後の継続的酸素濃度の測定が可能である。臨床での放射線治療は、通常、分割照射で行なわれるが、この分割照射における照射の至適照射間隔の設定に、ESR装置を用いたin vivo酸素濃度測定の応用が期待される。 また、ESR装置とMRI装置を一体化させることも可能であり、腫瘍の酸素濃度分布に適合した放射線治療が可能になることが期待できる。
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