研究概要 |
【目的】新規抗癌剤の登場は切除不能進行大腸癌の予後向上をもたらしたが、oxaliplatinによる肝障害sinusoidal obstruction syndrome(SOS)は、転移性肝癌に対する安全な肝切除の障壁となっている。SOS発症の機序と対策を明らかにする。 【方法】1)ラットにモノクロタリン(MCT)を投与しSOSモデルを作成。2)Phosphodiesterase-III阻害剤のオルプリノン(OLP)によるSOS予防効果を検証。3)SOSラットをOLP投与・非投与群に分け70%肝切除を行い、生存率を比較。 【結果】1)MCT投与により肝類洞の拡張と出血および中心静脈周囲の線維化を認め、ヒトSOSの組織所見と合致。2)OLP投与群において肝障害は軽減し(非投与群vs.投与群;AST,3753±1173IU/l vs.270±162IU/l;ALT,2466±933IU/l vs.147±70IU/l;hyaluronic acid,1628±674ng/ml vs.418±236ng/ml;各P<0.01)、肝でのheme oxygenase(HO)-1発現上昇がみられ、HO-1 inhibitor投与でSOS改善効果は打ち消された。3)肝切後の生存率はOLP投与群で有意に改善した(10days;MCT+vehicle vs. MCT+OLP;6.3%vs.46.7%,P<0.01)。 【結論】OLPはHO-1発現を介してSOS発症を抑制し、肝切除後の肝不全の発症を予防した。今後臨床においても使用可能な薬剤で臨床応用が期待される。
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