研究概要 |
近年, 画像診断の進歩とともに比較的早い段階で発見される肺癌患者が増えている. しかし画像診断のみではリンパ節転移診断の精度が低く, どの患者に対しても画一的な縦隔リンパ節郭清が行われている. 画一的にリンパ節郭清を行った場合は, 腫瘍径の小さな患者ではリンパ節転移の頻度が低いために, 無駄なリンパ節郭清を行うことになる. 一方, 現在, 核医学診断で用いられている主な方法はラジオアイソトープを患者に投与して, その原子を含む分子の集積を画像で解析するものである. ラジオアイソトープの中には特異的に腫瘍に集積する性質を持ったものがあり, 悪性腫瘍の部位診断や良悪性の鑑別に応用されている. クエン酸ガリウムは特異性に問題があるものの広く用いられてきた. またフルオロデオキシグルコースFDG(F-18)を用いたポジトロン・エミッション・トモグラフィーは最近急速に普及してきている. この研究では腫瘍に集積するラジオアイソトープを術前に投与して, 手術中にリンパ節を摘出せずに放射線カウンターを用いてリンパ節転移診断が可能か否かを検討することを目的としている. この研究期間では手術前に患者にクエン酸ガリウムを投与して手術中にリンパ節の放射能を検討したが, S/N比が低いためにバックグラウンドとの鑑別が難しかった, 次にFDG(F-18)を用いた検討では残念ながら, in vitroでも現在のガンマ-プローブでは信号を検出できなかった. これはFDGのenergyが511.0KeVであり, 一方ガンマプローブのEnergy rangeは最新式のものでも20-170 keVであるためと思われる. 最近FDGを検出可能なプローブが開発されて報告されているので, これらを入手して今後もこの研究を継続したい.
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