研究概要 |
ヒト断端神経腫のプロテオミクス 前年度に引き続き,神経腫切除を行った神経因性疼痛(CRPS type 2)患者3例の手術検体のプロテオーム解析を行った。新鮮凍結屍体から採取した腓腹神経を対照とした。それぞれの検体から700~1400個の蛋白質が同定された。CRPSの神経で発現し,正常神経では発現しない蛋白質は21個存在した。しかし,これらの中で信頼度の高いものはなかった。一方,正常神経では発現がみられるがCRPSの神経では発現のない蛋白質が82個同定された。これらの中で信頼度の高い1種の蛋白質は,抗酸化作用を有するものである。CRPSを発症した末梢神経は,神経の障害や変性に対する防御機構が低下または欠損している可能性が示唆される。今後,western blotにより蛋白質の存在を確認し,局在,症状との関連性を解明する予定である。 ラット坐骨神経切断後の遠位および近位断端のプロテオミクス 昨年度までに,プロテオーム解析によりラット坐骨神経切断後5日~10日に近位断端からはa-FGF、GAP-43が、遠位断端からはPN-1、prosaposinが特異的に発現することを明らかにした。今年度はWestern blottingを行い,それら蛋白の発現を確認したGAP-43およびprosaposinに関してはプロテオーム解析から得られた発現パターンとほぼ同様のタンパク質の変化を認めた。a-FGFに関してはプロテオーム解析とWestern blotの結果に解離が見られた。
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