研究課題
挑戦的萌芽研究
精子と卵子が融合することで生命の萌芽としての1個の細胞(受精卵)を形成する"受精"の中で、細胞膜間での接着機構のメカニズムは不明である。細胞接着因子インテグリンの関与が否定されてからはますます混沌とした状況である。細胞接着因子としてカドヘリンファミリーが様々な組織で同定されており、β-カテニン、α-カテニンによる接着装置の形成および維持機構も自明のことであるが、精子と卵子の細胞膜の接着では全く議論されて来なかった。そこで本研究では、卵特異的遺伝子欠損マウスの作製から、配偶子の細胞接着におけるE-カドヘリン、β-カテニン、α-カテニンの関与について検討を行った。その結果として、【1】免疫沈降による複合体形成と、β-カテニン欠損卵子ではE-カドヘリンが細胞膜に局在できないという実験結果から、精子と卵子の融合前の細胞膜上にはE-カドヘリンが存在し、その裏打ちとしてβ-カテニンが存在すること、【2】アクチン重合阻害剤によってβ-カテニンの卵子での局在が乱されることからβ-カテニンはアクチン繊維に裏打ちされているが、α-カテニン欠損卵ではβ-カテニンの局在が変化しないことから、卵子ではβ-カテニンとα-カテニンは複合体を形成していない可能性があること、【3】β-カテニン欠損卵では精子との接着能が有意に低下し、細胞外マトリックスとしての透明帯を除去した卵子では精子との融合能が低下すること、を示すことができた。精子と卵子の接着メカニズムの一端が明らかにできたことから、接着から融合に至る分子メカニズムの解明に繋がると考えられる。また、受精以外の融合現象との類似性を探ることから、感染症などの膜融合が関わる生命現象の解明、予防にもつながると考えられる。
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