研究概要 |
高齢化社会の到来に伴い, 口腔内において半永久的に使用できるバイオセラミックスや金属系インプラント材料の開発は重要となっている。本研究おいて, 平成19年度では骨形成に必須となる元素とチタンのナノサイズでの複合化に成功し, 今年度にはチタンに酸素を導入する手法の確立・分析ならびに骨髄由来細胞の増殖・分化・石灰化, 動物の大腿部に埋入することによる骨との接合性評価を行った。チタンに酸素を導入するには, まずチタン表面にポリビニルアルコールの膜を形成し, アルゴン中700℃で加熱処理することが最適であった。得られた酸素固溶型チタンには, その表面に20nmの炭素層, 深さ方向に酸化チタンの酸素濃度の低下層が形成していた。酸素固溶型チダン表面での骨髄由来細胞の増殖・分化・石灰化は純チタンより優れており, 培養時間の経過に伴う増殖から石灰化の進行速度が速いことが明らかとなった。4kgのウサギを用いて, その大腿骨に酸素固溶型チタンを埋入し, 一定時間飼育した後, 埋入材料を大腿骨と共に摘出した。酸素固溶型チタンと骨との接合性をオートグラフにより検討したところ, 純チタンの2倍の剪断応力値を観測した。これらの結果は, これまでのインプラント材料と比較して, 酸素固溶型チタンに優位性があると言え, 臨床適用に近いものであると考えられた。
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