研究概要 |
本研究課題は,「伸展・圧縮などの外的刺激」と従来の「組織工学的手法」を組み合わせ,間葉系幹細胞をin vitroで成熟した筋管細胞・筋繊維に分化誘導し,in vivoでの咀嚼筋・舌組織再生に応用することを目的とする。筋芽細胞株C2Cl2細胞に対してカスタムメイドのバイオリアクター(反復伸展装置)を用いて継続的伸展刺激を与えた結果,細胞は一方向に配列し,筋関連遺伝子・蛋白の発現を亢進した結果,筋管細胞への分化誘導が促進された。この伸展刺激による細胞配向・筋分化促進作用を,多分化能を有する骨髄間質細胞に応用するため,マウス骨髄間質細胞よりクローナルな細胞株を樹立し,この細胞株に継続的伸展刺激を与えた。その結果,これらの細胞は一方向に配向したうえで著明に筋芽細胞へ分化することが明らかとなった。これまでの報告から,間葉系幹細胞を骨格筋系へ分化誘導することは,骨芽細胞や脂肪細胞への分化誘導と比較して困難と考えられている。我々の実験結果は,生体内における骨格筋組織の力学的環境を試験管内で擬似的に再現し,収縮・伸展を与えることで,間葉系幹細胞を骨格筋系へ分化誘導できる可能性を示唆するものである。さらに,我々はこの反復伸展刺激により分化誘導した筋系細胞を層状に重ね,細胞シートを作製することに成功した。今後,この配向細胞シートが生体内の筋組織により速やかに生着するか否かを動物実験により検討していき,舌・咀嚼筋を含めた筋組織工学に繋げたいと考えている。
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