研究概要 |
1.付着歯肉組織と遊離歯肉組織の遺伝子発現解析 前年度のマウスならびにラット歯肉組織の組織学的検討をもとにして,成体マウスの口腔内から実態顕微鏡下で付着歯肉と遊離歯肉をそれぞれ採取した、この組織からmRNAを抽出し,cDNAマイクロアレイを行い,両者の遺伝子発現を比較・検討した. その結果,付着歯肉で発現量の高い遺伝子として,mmp12, integrin(alpha6), laminin(beta3), HIF-1a, VEGF, tenomodulin, collagen(typeV, alpha2), integrin(beta4)などが抽出された.一方,遊離歯肉で発現量の高い遺伝子としてIGFBP2, RABL3(member of RAS oncogene family-like3), RASA3(RAS p21 protein activator3), elastinなどが抽出された.既知の発現パターンと機能から考察するといくつかの遺伝子はたいへん興味深い研究対象と考えられた. 2,ヒト歯肉上皮細胞の培養 倫理委員会の許可を得て,抜歯時に得られたヒト歯肉サンプルから歯肉上皮細胞を分離し,同時に得た歯原性上皮細胞とその差異を比較,検討した. その結果,歯肉上皮細胞は培養条件下では寿命が短く,cumulative population doubling(cPD)は平均8であった。一方,歯原性上皮細胞は平均16のcPDを示した.また,両者ともに上皮細胞のマーカーであるサイトケラチン14とE-cadherinを遺伝子レベルで発現していたが,amelogeninの発現は歯肉上皮細胞では認めなかった.すなわち,歯肉上皮細胞は歯原性上皮細胞と比較して,明らかに異なるフェノタイプを有していることを明らかにした.
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