研究概要 |
1998-2000年にかけて,全身状態に問題のない192人の小児・思春期の対象のデンタルプラークと唾液中に含まれる歯周病原性細菌10菌種を分析した.その対象のうち,7年後の2006-2007年にかけて定期検診で受診した26人について,再度デンタルプラークと唾液を採取し10菌種の歯周病原性細菌の検出し,歯周状態との関連と同一人物における7年前に検出された菌種との差異を比較検討することにした.すると,デンタルプラークのデータからは,歯周ポケットの深さとその部位の総菌種数に正の相関があることが分かった.また,同一人物における唾液サンプルの分析からは,1回目のサンプル中の総菌種数とその7年後のサンプル中の総菌種数には正の相関が認められ,小児期に多くの歯周病性細菌種を有する患児は,思春期に至っても多くの細菌種を保有することが示された. さらに,red complex菌種として知られているPorphyromonas gingivalis, Treponema denticola, Tannerella forsythensisに着目して分析すると,2006-2007年にred complex菌種を有している対象は有していない対象よりも10菌種中の総菌種数が多かった.7年前の総菌種数を比較すると,red complex菌種を有している対象は,有していない対象よりも有意に高い値を示した.また,1回目のサンプル中において総菌種数が2菌種以上の対象と1菌種以下の対象の2群に分けて分析すると,2菌種以上保有していた対象は1菌種以下の対象よりも,7年後に検出される総菌種数が有意に高くなることも示された.小児期における歯周病原性細菌の総菌種数と思春期における総菌種数との関連やred complex菌種の保有という指標を,今後の歯周疾患発症における高リスク者特定法の確立にっなげていきたいと考えている.
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