研究概要 |
看護業務は,患者の移送など重量物取り扱い業務に分類され腰痛発症のリスクを伴うものが多い.実際の看護職の腰痛経験率は,調査対象により若干異なるが,7割前後と多く,大勢の看護師が腰痛に悩む現状がある.看護技術は複合的な動作の連続であり,腰痛の原因と言われている,“中腰",“前傾",“ひねり"姿勢で患者を抱えて実施する場面が多くみられる.看護師により実施する技術方法に違いがあるが,腰部への負荷は,患者を抱える時や引き上げる時に共通して大きくなることから,本年度は,腰部への負荷量を数値化,定量化する方法を検討した.ベッドー車椅子移乗介助時の動作姿勢が腰部に及ぼす影響について,表面筋電図を用いて,動作姿勢と腰部被験筋の活動量を計測した.データの計測は,EMGアンプ(SX230, DKH社製)を腰椎L2とL4をはさむ左右4箇所(広背筋・脊柱起立筋)に貼付し,TRIASシステム(DKH社製)にて全波整流平滑化後の最大値, iEMG, mEMG, RMS値とその映像から特徴を分析した。被験者は看護師経験のある30歳代女性とし,「ベッドー車椅子移乗介助」を臨床で用いられる3方法で行った.さらに,それぞれの方法を(1)患者をベッド中央から端に寄せる(2)患者の上体を起こす,(3)車椅子へ移乗させる,(4)患者の姿勢を整える,という4動作に分け分析した.その結果,4動作別iEMGでは,3方法ともに(3)の移乗の動作が最も高値であった.他,方法の違いで(2)の動作で負担が大きくなること,また4動作通して低値となる方法があることがわかった.mEMGについては,(4)の動作において,患者を車椅子の後ろから引き上げる動作で,mEMGが高値を示し,それぞれの動作で改善すべき方法があることが定量的に明らかとなった.
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