研究概要 |
平成19年度は訪問看護ステーション看護師による身体測定および栄養評価の実施の実現性について具体的に検討を進めた。現在国内のある調査結果では約40%の入院患者に低蛋白・エネルギー低栄養状態(PEM)が報告されており,平均在院日数の短縮化と共に退院後の在宅療養者もPEMに陥りやすいことが予想されたが,訪問看護ステーションの利用者にどの程度ニーズがあるのか,また,利用者および訪問看護師にとって「栄養評価」がどのような負担となる可能性があるのかについて,まず訪問看護ステーション管理者にヒアリングを行った。当初、対象方法としてアボット社の栄養アセスメントキットを使用する予定していた。文献検討の結果,最近の国内における標準的な栄養アセスメント方法として,自覚的包括的評価(SGA)が多く採用されていた。しかし,SGAでは評価者の知識や経験に委ねられている部分があり,一般的な看護師の栄養に関する基礎教育状況から評価に差違が生じる可能性があることが考察された。近年簡易的かつ精度が高い評価法としてミニ栄養アセスメント(MNA)がネスレ社から提供され,国内でも精度の研究が進められており,栄養素の摂取と身体計測値と生物学的パラメータと有意に相関することが報告されていることから,MNAと身体計測,さらには写真による食事内容の分析を組み合わせることで,非侵襲的で精度の高い栄養評価として担当医や管理栄養士に報告し,迅速な対応がしやすくなると予測した。これを一つのパッケージ方法として訪問看護ステーション管理者に提案したところ,(1)身体測定については看護師の研修およびある程度の熟練が必要と思われる(2)写真を利用した食事調査については,ある程度対応可能な利用者が限定されると予想されるが,法人所有のケア付きアパートの比較的日常生活が自立している独居虚弱入居者では,糖尿病などの栄養障害を来しやすい入居者が多いため,このような方法での継続観察が適しているように思う,という主旨の意見があった。従って,栄養障害の早期発見というよりも予防的な意義をより重視することで,測定負荷を考慮しても訪問看護における栄養スクリーニングの意義が高まるものと考えられた。
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