研究概要 |
動詞が比喩的に解釈される文(動詞比喩)の理解に際し、どのような情報が利用されるかを明らかにし、理解プロセスを解明するため研究を行った。研究1では、動詞の語義の脱曖昧化に対して名詞句の語順が影響を与えることを示した。実験では、同じ動詞と名詞句から構成される文について、名詞句の語順が異なる2つの文を用意し、それぞれの文において動詞が字義通りの意味に感じられるか比喩的な意味に感じられるかを選択させた。その結果、名詞句の語順の違いによって,動詞が比喩的な意味へと解釈される傾向の強さに差が生じることが示された.さらに、より意味が抽象的であり多様な用法を持つ動詞の方が,そうでない動詞に比べて,このような動詞の意味の脱曖昧化に対する語順の影響が強いことが明らかになった.また、いくつかの動詞をとりあげ,名詞句の語順の選好度を測定した結果,やはり比喩的な意味で使われる場合とそうでない場合で名詞句の語順の選好が異なることが示された.これらの成果は、学会発表(The 30th annual conference of Cognitive Science Society等)ならびに論文(認知言語学会論文集、印刷中)にて発表された。研究2では、コーパスや日本語格フレーム辞書等の言語資源を利用して、動詞の語義の頻度を推定する調査を行った。その結果、各動詞が比喩としてどの程度頻繁に用いられているかはまちまちであり、基本義と見られる用法よりも比喩的用法の方が頻度が高いと考えられる動詞も見受けられることが明らかになった。これらの調査結果と既存の資料を合わせて実験材料を作成し、理解可能性、比喩性等の評定実験を行った。これにより、より抽象的な意味を持つ動詞の方が、より特定的な意味を持つ動詞に比べて、比喩としての読みが生じやすいことが示唆される結果が得られた。これらの成果については、今後発表に向けてまとめを行っていく予定である。
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