研究課題
若手研究(B)
神経幹細胞は、自己増殖能を持ち、神経細胞およびグリア細胞に分化することができる細胞である。そのため、神経幹細胞は、損傷神経組織の再生を目指した細胞移植のソースとして期待されている。その神経幹細胞の増殖と分化を制御することは、神経組織工学において極めて重要である。我々は、自己組織化プロセスを使用して作製したハニカムフィルムを足場材料として、胎生14日目のマウス胎仔大脳皮質組織から調製した神経幹細胞を培養し、足場表面の規則的微細構造によって神経幹細胞の分化と増殖がどの様に制御されるかについて研究を行った。平膜およびハニカムフィルム上に神経幹細胞を播種し、培養5日後、細胞形態を観察した。平膜および孔径10μmのハニカムフィルム上では、神経幹細胞は神経細胞に分化し、神経突起を伸展させた。孔径10μmのハニカムフィルム上においては、ハニカムパターンに沿って神経突起が伸展した。一方、ザブセルラーサイズ(孔径3μm)のハニカムフィルム上においてスフェロイドが観察され、Nestin免疫化学染色およびBrdUラベリングを行った結果、スフェロイドは、Nestin免疫化学染色およびBrdUラベリングに対して陽性を示し、未分化な増殖性の神経幹細胞で構成されていることがわかった。連続動画観察から、未分化な神経幹細胞がハニカムフィルム上で分化が抑制され未分化増殖によってスフェロイドを形成し、さらにスフェロイド同士が凝集して大きなスフェロイドに成長することが明らかになった。また、ハニカムフィルム(孔径3μm)上の全細胞数は、平膜と比べ増加することがわかった。この結果は、神経幹細胞の未分化増殖によるものと考えられる。パターンの孔径変化により、ハニカムフィルムが神経突起のガイドとして働き、神経幹細胞の分化と増殖を制御できることから、神経組織再生のための足場材料として有用であることが示唆された。
すべて 2007
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Colloids and Surface A:physicochemical Engineering Aspects 313-314c
ページ: 536-540