南極氷床縁の氷床高度や海面(海表面)高度のリモートセンシングが可能になると、南極氷床周縁部における水質量の分布や循環・移動を捉える上で有効であることから、GPS電波の反射波を活用し、小型の観測装置で実現可能な全天候型の海面・氷面高度リモートセンシング技術開発を推進する。そのため、GPS反射波測定専用受信機を試作して観測実験を行い、解析アルゴリズムの開発に必要な基礎データ(GPS電波のIF信号)を蓄積する。市販のソフトウェアGPS受信機との平行観測から、専用受信機(試作機)の動作評価をすることを目的とする。 本年度は、GPS反射波による海面高度・海面粗度計測に必要なGPS電波の直達波と反射波の中間周波数(IF)信号を収録するため、市販の評価ボード等を活用して、デュアルフロントエンドのGPS反射波測定専用受信機を試作した。また、直達波用の右円偏波アンテナと反射波用の左円偏波アンテナ(パッチアンテナ)を購入した。非常に膨大なデータ量になるGPS電波のIF信号データの収録モジュールは、試作機を制御するPC(低温でも動作可能)とデータ蓄積装置で構築した。 これらのシステムを用いて、国内で実施を予定していた観測実験は、研究代表者が第49次南極地域観測隊に参加することとなったため、実施できなかった。しかし、昭和基地に持ち込むことができたため、越冬期間中に試作したGPS反射波測定システムを用いて、南極域の海氷、ならびに氷床で反射されたGPS電波を測定する地上観測実験を実施する。これにより、GPS反射波による氷床・海氷高度の解析アルゴリズム開発に有用な基礎データが収集できると考える。
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