研究概要 |
希土類六ホウ化物の応用の一つとして電界放射型陰極がある。電界放射型陰極は、熱陰極に較べ輝度が約1,000倍も高いため、走査型電子顕微鏡をはじめ、各種の電子線装置にすでに適用されている。 電界放射型陰極の材料に一般的に望まれる性質は、機械的強度が大であること、イオンスパッタ率が小さいこと、高融点であること、蒸気圧が低いことなどである。希土類六ホウ化物はこれらの条件を満たす材料の一つである。例えば、硬度はWより4倍硬く、イオン衝撃に強い。また、仕事関数はWが4.5eVであるが、LaB_6、CeB_6、YB_6はそれぞれ、2.8、2.0、1.5であり、Wと較べて優れた電界放射特性を示している。単結晶LaB6の熱陰極の輝度はWの100倍あり、よく知られているように熱陰極として現在実用化されている。しかし、単結晶LaB6は加工性が悪く、チップの最小先端径が5-100μmと、シャープなチップの作製が困難なために、電界放射型陰極の素材として使えない。 最近、われわれは世界で初めて、化学気相堆積(CVD)法による希土類ホウ化物(LaB6,CeB6,GdB6,YB12)単結晶ナノワイヤの作製に成功した。これらのホウ化物ナノワイヤは、先端の直径が数十nmで長さは数μmあり、電界放射型陰極として非常に有望である。 電界放射型陰極への応用では、輝度及びエネルギー幅、安定性が重要なパラメーターになっている。これまでの研究により、汎用電界放射型陰極の場合より一桁低い真空度を使用するにもかかわらず、希土類ホウ化物の単結晶ナノワイヤエミッタで輝度が一桁上がり、また、電流安定性がはるかに増加するという結果が得られた。このことにより、高分解能電界放射型陰極の応用へ大きく進歩し、実用化への目処立ってきた。
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