研究概要 |
哺乳類のDNA塩基にメチル基が付加される化学的塩基修飾(メチル化)は、個々の遺伝子の発生段階・各組織特異的な機能発現制御、ゲノム刷り込み現象、雌におけるX染色体不活化、そしてゲノムに侵入したウイルスの不活性化による生体防御など、哺乳類の生命維持に不可欠である。このため、約3万個からなるヒト各遺伝子の転写制御領域(プロモータ領域)のメチル化状態を各組織別に調べることは、ヒトゲノム配列決定後の一大研究となっている。このような背景を基に、これまで研究代表者は、独自に考案したHM-PCR法により、ヒト転写因子遺伝子約2,000個のプロモータのメチル化状態を5つの正常組織において調べる「ヒトメチル化ボディマップ」の作成に取り組んできた。現在までに、ヒト末梢血細胞由来ゲノムにおいて、約1,000個のヒト転写因子遺伝子プロモータのメチル化状態を同定済みである。このうちインプリント遺伝子近隣に頻繁に見られ、かつアレル特異的なメチル化を受けている領域(DMR)の候補である混合型メチル化を受けているプロモータは129個存在した。 そこで本研究では、既に同定済みの混合型メチル化を受けている129個のヒト転写因子遺伝子プロモータから、新規のDMRおよびそれらの周辺に存在すると予想される新規ヒトインプリント遺伝子を同定することを目的とした。混合型メチル化を受けているプロモータのうち約40個について、そのメチル化状態をBisulfite sequencing法により確認した。結果としてこのうち約50%のプロモータが実際に混合型メチル化を受けている可能性が示唆された。
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