研究課題
若手研究(B)
持続可能な社会の構築に向け生態系修復が課題となっている湖沼生態系を対象として、生物多様性・生態系サービスの点で健全な状態に復帰させるための方法論の確立に向けた基礎研究として、(1)絶滅危惧植物の持続可能な個体群再生に必要な条件を検討する研究と、(2)過去の人為によって破壊された湖沼沿岸植生帯を再生させるための条件の研究を行った。(1) 絶滅危惧水生植物の個体群再生:アサザをモデル植物とした研究霞ヶ浦におけるアサザ個体群の個体群生態学的および集団遺伝学的研究を総合した分析の結果、理論的に重要性が指摘されているいくつかの問題、すなわち小規模化し遺伝的多様性が低下した地域個体群の突発的な絶滅、小集団における個体の繁殖成功度の低下、残存する成熟個体におけるヘテロ接合どの高さが確認された。土壌シードバンクとして残存する個体の遺伝解析の結果、土壌シードバンクは遺伝的多様性(対立遺伝子の多様性)の回復には効果的な材料となることが示唆された。一方、土壌シードバンク中の個体は近交係数が高く、近交弱勢による適応度の低下が懸念された。霞ヶ浦では、個体群再生に向けた取り組みの結果、地域個体群数とジェネット数が回復しつつあることが示唆されたが、今後も継続的なモニタリングと順応的管理が必要である。(2) 湖岸植生帯の再生霞ヶ浦で2002年に開始された湖岸植生帯の再生事業地をモデルケースとして、植生再生に必要な条件の検討を行った。2002年に開始されたこの事業は、種多様性の高い土壌シードバンクを含む湖の底質を植生導入の材料に用いて行われ、実施後5年以上が経過した現状でも、湿潤土壌状態が維持されている場所では在来湿生植物が優占する条件が維持されていた。一方、比高が高い場所ではセイタカアワダチソウをはじめとする侵略的外来種の繁茂が認められた。これらの場所では市民参加による駆除管理が進められている。また、事業を実施した当初は再生が認められた沈水植物は、植生発達と底質へのリター・有機物の堆積に伴って消失した。沈水植物を再生させた事例として印旛沼における再生事業地での研究を行った。印旛沼の湖岸には、1960年代に湖底から浚渫された土砂を用いて造成された「高水敷」が存在する。この高水敷の土砂中に、現在の印旛沼の地上植生からは消失した沈水・浮葉植物の散布体バンクが存在している可能性について検証するとともに、散布体バンクからの個体を定着・成長させ種子生産させることでこれらの植物の保全に寄与することを目的として、高水敷に浅い池を造成する事業が千葉県により実施された。造成された6つの池のうち2つでは、絶滅危惧種であるガシャモク、シャジクモ、オトメフラスコモを含む8種の沈水・浮葉植物が確認された.沈水植物が出現した池では多数の種子が新たに生産されていることも確認され、この事業が散布体バンクの保全にも寄与したことが示された。しかし、4つの池では水生植物は確認されず、散布体バンクの分布には空間的な偏りがあることが示唆された。
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