本研究では地域交通と地方自治体の関係について次の二点を明らかにした。第一は、戦前期から戦後・高度経済成長期にかけて地域交通の維持は地方自治体の政策課題であったということである。この時期の地方自治体は、「自治」の観点から地域交通を一元的に管理・統制しようと考えていた。第二は、近年、地域交通に対する「自治」の視点が希薄になっているということである。これは「経営」の視点を重視する潮流によってもたらされた。この結果、農村部では鉄道の廃止が相次ぎ、都市部では民営化が推し進められるなどしたのである。高齢化社会となり、過疎化が進みつつある現在、地域交通は再び「自治」の問題として捉えざるを得なくなってきている。その際のポイントは、一つは地方自治体の役割(行政の役割)をどのように位置づけるのかということにある。
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