研究概要 |
本年度は,コンパクトなRiemann多様体の崩壊において,微分形式に作用するLaplacianの固有値の振る舞い,特に,0に収束する小さい固有値の存在とその多様体の位相的な性質の関係について研究を行った。 一般に,Riemann多様体の崩壊理論では、曲率の有界性を仮定する場合が多いのだが,そうすると逆に、微分形式の固有値の解析・計算が非常に複雑になってしまう。そこで,まず、曲率の有界性を犠牲にして,微分形式の固有値の計算し易い状況において,小さい固有値の存在と多様体のトポロジーとの関係を明らかにすることを当面の目標として研究を進める計画を立て行なった。まず,関数の場合には,Riemann多様体の崩壊の極限空間に各k番目の固有値が収束することを示した。次に,一般のp形式の場合には,ファイバー空間Fのベッチ数が零のときに,p形式の第一固有値が無限大に収束すること,及び,ベッチ数が零でないときは,p形式の第一固有値が有界にとどまることを示した。この結果,m次元球面上のRiemann計量の1径数族で,m次元単位ボールに崩壊し,n<p<m-nなるp形式の第一固有値は無限大に発散し,その他のp形式の第一固有値は有界に留まるという,興味あるRiemann多様体の崩壊現象の例を構成することができた。
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