研究課題
若手研究(B)
スティショバイトは、マントル主要構成鉱物とは考えられていないが、沈み込むスラブ中に存在すると考えられている。従って、そのレオロジーはマントルダイナイミクスを理解する上で重要であり、珪素自己拡散係数のデータは有用である。また、鉱物学的見地から言うと、スティショバイトは代表的な珪素が六配位を取る鉱物である。四配位珪素と六配位珪素との間の自己拡散係数の違いを明らかにすることは、鉱物の物理的性質を構造から議論する上で有用である。以上の理由から、本研究ではペロフスカイトの自己拡散係数を測定する前に、スティショバイトの珪素自己拡散係数の測定を行った。本研究では、まずスティショバイトの単結晶を、川井型高圧装置を用い温度勾配法により合成した。出発物質は無水珪酸であり、水とともに白金カプセルに封入した。試料は常温で14GPaまで加圧し、1770Kまで加熱した。その後階段状に冷却し、500μmサイズ程度の単結晶を育成した。合成した結晶は、(110)面または(001)面で切断し、コロイダルシリカで研磨し。研磨面に29Siを蒸着した。(110)面を処理した結晶と(001)面を処理した結晶をペアにして高温高圧下でのアニールを行った。アニールした圧力は14GPa、温度は1670K・1770K・1870K・2070Kである。アニールした時間は3時間から100時間である。アニールした試料は、SIMSにより拡散プロファイルの測定を行った。今回得られた結果によると、スティショバイトの珪素自己拡散係数は10(-20)m2/sと非常に小さい。[110]方向の珪素自己拡散係数は[001]方向より少し大きいが、異方性は非常に小さい。[110]方向と[001]方向の活性化エネルギーは320kJ/molと330kJ/molで、MgSi03ペロフスカイト(340kJ/mol)とほぼ同じである。石英とフォルステライトという常圧下で安定な鉱物の珪素自己拡散係数は、750kJ/mol・530kJ/molという大きな値を持つ。六配位の珪素は四配位の珪素と比較し、小さな活性化エネルギーを持ち、高温での拡散係数の絶対値も低いと結論される。
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Physics of the Earth and Planetary Interiors (印刷中)
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 105
ページ: 7115-7119
Physical Review Letters B 101
ページ: 77206-77206